近年、ホテル業界においてセルフチェックインシステムの導入が進んでいます。このシステムは、ゲストが自らチェックイン手続きを行うことで、フロントスタッフの負担を軽減し、効率的な運営を実現するためのものです。
セルフチェックインは、無人フロントを完全に実現するホテルや、従来の有人フロントを補助する形で導入されるホテルなど、様々な形態で展開されています。
この記事では、セルフチェックインシステムのメリットとデメリット、主なタブレットチェックインシステムや自動チェックイン機・精算機の紹介を行います。導入形態ごとの費用感、必要な台数の考え方、製品の選び方まで整理しているので、これから検討する施設はぜひご覧ください。
目次
セルフチェックインシステムとは
セルフチェックインシステムは、ホテルのゲストが自らチェックイン手続きを行うシステムです。このシステムには、チェックイン・チェックアウトの自動化、予約情報のサイトコントローラー経由での取得、宿泊者情報の入力と名簿作成、パスポートデータの取得、本人確認、そして鍵の受け渡しの機能が備わっています。
無人フロントでの活用
完全なセルフサービス型ホテルでは、フロントスタッフが常駐せず、すべての手続きがセルフチェックイン機によって行われます。このタイプのホテルは、人件費の削減が大きなメリットとなり、特に30室以下の小規模施設で活用されています。
有人フロントでの活用
有人フロントを併設するホテルでのセルフチェックインシステムの導入は、ピークタイムにおける混雑緩和が最大の利点です。従来、チェックイン時の長い待ち行列は、ゲストの不満の原因となりがちでしたが、セルフチェックインシステムを導入することで、この問題を大幅に軽減できます。
ゲストが自らチェックイン手続きを行うことで、フロントスタッフは他の重要な業務に集中できるようになります。これにより、フロント業務全体の効率が向上し、スタッフがより質の高いサービスを提供することが可能となります。
セルフチェックインシステムにおけるメリット
セルフチェックインシステムの導入には、ホテル運営において多くのメリットがあります。以下に主な点を挙げます。
チェックイン業務の削減による人手不足の軽減
システム導入により、フロントのチェックイン業務が減少し、人手不足の問題が軽減されます。これにより少人数で運営ができ、人件費の削減や人手不足への対策になります。
多言語対応
多言語対応が可能なセルフチェックインシステムが多く、インバウンドゲストのチェックインを容易にします。さらに、チェックイン画面では、滞在期間中の案内や注意事項を多言語で表示できるため、インバウンドゲストも安心してホテルを利用できます。
ゲストの待ち時間短縮による顧客満足度の向上
特にチェックインが混雑する施設や時間帯に効果を発揮します。例えば、コンサートやイベントが開催される近隣の施設や、土日のチェックイン開始時間などがその典型です。これにより、ゲストは待ち時間を気にすることなく、スムーズな滞在を楽しむことができます。
2台設置したiPadを利用してゲスト自身に入力してもらうことで、以前よく見られたフロントに並ぶ人の列がなくなり、スタッフの作業負担も大幅に減少しました。
深夜のチェックインが可能
従来のフロント業務時間に縛られることなく、24時間いつでもチェックインが可能になります。早朝や深夜の到着でも、ゲストは問題なくチェックインでき、ホテルの利便性が高まります。
セルフチェックインシステムにおけるデメリット
導入コストが高い
セルフチェックインシステムの種類によっては、導入コストが大きく異なります。タブレット型のシステムは比較的安価で導入が容易ですが、自動チェックイン機や精算機は、1台あたり数百万円のコストがかかることがあります。このため、特に予算に制限のある小規模施設では、導入の際に費用対効果を慎重に検討する必要があります。
スムーズに操作できないと、導入の恩恵が得られない
セルフチェックインシステムを導入しても、操作に慣れないゲストが多い場合、1人のチェックインに5分程度かかってしまうことがあります。操作方法が複雑でゲストが混乱し、結果としてスタッフがサポートに追われることで、省人化のメリットが得られなかったというホテルも存在します。そのため、直感的でわかりやすいユーザーインターフェースのセルフチェックインシステムを選ぶことが重要です。
また、事前にスマホで宿泊者名簿の登録ができ、セルフチェックインシステムにQRコードをかざすだけでチェックインが完了する、スマートチェックインシステムを併用することも効果的です。
システムトラブル時の対応
システム障害や故障が発生した場合、迅速な対応が不可欠です。特に人員が限られている施設では、サポートがしっかりとしているサービスを選ぶことが重要です。適切なサポート体制が整っていれば、トラブル発生時の影響を最小限に抑えることができます。
システム導入を検討する際には、これらの点を十分に考慮することが重要です。
セルフチェックインシステムの費用相場
セルフチェックインシステムの費用は、タブレット型か自動チェックイン機かで10倍以上変わります。まずどちらの型を選ぶかを決めることが、予算計画の出発点になります。
| 比較項目 | タブレット型 | 自動チェックイン機 |
|---|---|---|
| 機器の費用 | 数万円〜(タブレットとスタンド) | 1台あたり数百万円 |
| 設置スペース | カウンター上に置ける | 専有スペースと電源・通信工事が必要 |
| 決済 | タブレット上または別途決済端末 | 本体に内蔵。現金対応も可能 |
| 鍵の発行 | スタッフ手渡しまたはスマートキー連携 | カードキー発行機を内蔵可能 |
| パスポート読取 | カメラ撮影が中心 | 専用リーダー搭載機あり |
| 導入までの期間 | 短い(機器の手配が容易) | 長い(受注生産・設置工事) |
| 台数の増減 | 繁忙期だけ増やすなど柔軟 | 増設に工事が伴い機動性は低い |
チェックイン機の台数と動線の設計
フロントを残したまま導入する場合、成果を左右するのは製品選びよりも何台置き、どうゲストを流すかです。1台だけ端末を置いて「使う人が少なかった」で終わる導入は、たいてい設計の問題です。
必要台数の考え方
台数は次の式で概算できます。
必要台数 = ピーク1時間の到着組数 ÷(60分 ÷ 1組あたりの所要時間)
鍵になるのは1組あたりの所要時間です。ゲストが端末の前ですべてを入力する運用では1組5分程度かかることがあり、この場合1台で1時間に12組しか捌けません。ピーク1時間に40組が到着する施設なら、単純計算で3〜4台必要になります。
一方、事前チェックインを併用してQRコードをかざすだけの運用にできれば、1組あたり1分前後まで縮みます。同じ40組でも1〜2台で足りる計算です。台数を増やすより、先に所要時間を縮めるほうが費用対効果は高くなります。
自施設のピークを把握するには、PMSの予約データからチェックイン時間帯別の到着数を集計してください。曜日やイベント開催日で偏りが大きい施設ほど、実測にもとづく設計が効きます。
設置場所と動線
端末をフロントカウンターの端に置くと、有人の列と混ざって使われません。入口からフロントに向かう導線上で、有人カウンターより手前に置くのが基本です。ゲストが並ぶ前に目に入る位置であることが重要です。
- セルフ用と有人用のレーンを床のサインなどで視覚的に分ける
- 複数台置く場合は横並びにし、待機列を1本にまとめる(フォーク型)と回転が安定する
- 荷物を置けるスペースを端末の近くに確保する
- 自動チェックイン機は電源とネットワークの位置に制約を受けるため、設置場所を先に決めてから機種を選ぶ
スタッフの役割が変わる
有人併用でよくある失敗が、スタッフがカウンターの中に留まったままになることです。ゲストは慣れた方法(有人)を選ぶため、セルフ側が使われません。
導入初期は、カウンターの外に立ってセルフ側へ案内する役割を1名置くと定着が早まります。全員を捌くのではなく、操作に迷ったゲストだけを拾う立ち回りに変わるため、結果的に1名でピークを回せるようになります。実際に、2台のタブレットを設置してゲスト自身に入力してもらう運用に切り替えたことで、フロントに並ぶ列がなくなり、スタッフの作業負担も大きく減った施設の例があります。
また、高齢のゲストや操作に不慣れなゲストは一定数います。セルフを唯一の手段にせず、有人での対応を残しておくことが、クレームを防ぐうえでも現実的です。
セルフチェックインシステムの選び方3つのポイント
ホテルの規模やタイプ
大規模なシティホテル、特化型のビジネスホテル、小規模な旅館やブティックホテルなど、施設の規模や特性によって最適なシステムは異なります。例えば、小規模施設であれば初期費用を抑えたシンプルな機能のものを、大規模施設であれば既存のPMSとシームレスに連携できる高機能なものがおすすめです。
必要な機能が搭載されているか
「フロント業務をどこまで自動化したいか」を明確にし、必要な機能を洗い出しましょう。例えば、インバウンドゲストが多いならパスポートの読み取りや多言語対応は必須です。鍵の受け渡しをなくしたいならスマートキー連携やカードキー発行機能、顧客満足度を上げたいなら事前チェックイン機能が有効です。
利用中のPMSと連携できるか
多くのホテルでは既にPMS(ホテル管理システム)を導入しているはずです。セルフチェックインシステムが既存のPMSと自動連携できるかは非常に重要です。連携できない場合、二重管理が発生し、かえって業務が非効率になる可能性があります。導入前に必ず対応PMSを確認しましょう。
主なタブレットチェックインシステム
aipass(アイパス)

aipassは、ユーザーフレンドリーなデザインと予約情報を元にした入力アシスト機能を備えたセルフチェックインシステムです。このシステムは、入力項目が少なく、未精算の場合もタブレット上で簡単に決済が可能です。
完全無人施設や有人施設のセルフチェックインレーンへの導入実績が豊富で、非接触・非対面でのチェックインを効率的に実現します。PMS(宿泊管理システム)、ゲストアプリ(宿泊ゲスト向け専用アプリ)も提供しています。
Tabiq

Tabiqは、株式会社リクリエが開発した非対面チェックインシステムです。iPadなどのタブレット端末を利用し、言語選択、パスポート情報の取得、署名の取得、ビデオ通話による対面チェックインの代行の機能を備えています。
特に無人ホテルや省人化されたホテル運営に適しており、チェックインに要する時間の短縮や人員配置数の削減などの効果が見込めます。
https://tabiq-lp.reqrea.co.jp/
HOTEL SMART

HOTEL SMARTはホテルや旅館向けのクラウドチェックインシステムです。このシステムは、ゲストのスマホや施設に設置されたタブレット端末を利用してモバイルチェックインを実現し、受付の省人化や受付業務の無人化を可能にします。
旅館業法に対応しており、ホテルや旅館、簡易宿所営業にも適用可能です。
主な自動チェックイン機・精算機
自動チェックイン機を選ぶときの確認項目
機種ごとの差が出やすいのは次の4点です。
- 決済手段:クレジット・QR決済に加え、現金に対応するか。現金対応は釣銭機を伴うため本体サイズと価格に影響する
- カードキー発行:既存の錠前メーカーのカードキーを発行できるか。ここが合わないと鍵だけ有人対応が残る
- 設置要件:本体の寸法、高さ、電源とネットワークの位置。ロビーが狭い施設は先に置ける場所を確定させる
- 保守と障害対応:故障時の駆けつけ範囲と時間、代替機の有無。1台が止まるとピークが崩れるため、台数が少ない施設ほど重要
Eskio(日本NCRビジネスソリューション)

Eskioはフロントの混雑緩和とゲスト満足度向上を目的とした自動チェックイン機・精算機です。QRコードを使った予約検索や、様々なキャッシュレス決済に対応しており、チェックイン手続きをスムーズに行えます。
一番の特徴は、ホテルのニーズに応じたカスタマイズや機能拡充が可能な点です。多様なオプション機能を組み合わせて各ホテルに最適なシステムを提供しています。
https://www.ncr-bs.com/solution/hotel.html
ADCシリーズ(システムギア)

ADCシリーズは、高さ調節が可能なフレキシブル仕様で、コンパクトなサイズの自動チェックイン機です。狭いスペースでもレイアウトしやすく、既存のフロントや狭いロビースペースでも導入を検討できます。
空港等で使用されているものと同じ方式の高性能パスポートリーダーを搭載しており、インバウンドゲストの対応も可能です。
https://www.systemgear.com/solutions/hotel/hotel-payment.html
スマーレ(オムロン)

スマーレは、遠隔地からビデオ通話でお客様とコミュニケーションをとる「遠隔フロントシステム」を搭載した自動チェックイン機で、深夜帯のスタッフ負担軽減に役立ちます。
オートローディング式のクレジットカード処理を採用し、決済処理中のトラブルを防止し、ホテルスタッフのトラブル処理の手間を削減します。
https://socialsolution.omron.com/jp/ja/products_service/automation/smare/
セルフチェックインシステムのよくある質問
セルフチェックインとは何ですか?
ゲスト自身が施設に設置された端末を操作して、宿泊者名簿の記入、本人確認、精算、鍵の受け取りまでを行う仕組みです。端末にはタブレット型と自動チェックイン機の2種類があります。フロントを完全になくさなくても、ピークタイムの行列解消やスタッフの負担軽減といった効果が得られます。
セルフチェックインの導入費用はどのくらいですか?
タブレット型か自動チェックイン機かで大きく変わります。タブレット型は端末とスタンドで数万円から始められる一方、自動チェックイン機は1台あたり数百万円が目安です。
セルフチェックイン機は何台設置すればよいですか?
「ピーク1時間の到着組数 ÷(60分 ÷ 1組あたりの所要時間)」で概算します。端末上ですべて入力する運用では1組5分程度かかるため1台で1時間に12組ほど、事前チェックインを併用してQRコードをかざすだけなら1組1分前後まで縮みます。台数を増やす前に、所要時間を縮められないかを検討してください。
セルフチェックインとスマートチェックインは何が違いますか?
手続きする場所とタイミングが異なります。セルフチェックインは到着後に施設の端末で行い、スマートチェックイン(事前チェックイン)は到着前にゲスト自身のスマートフォンで行います。両方を組み合わせると、到着時はQRコードをかざすだけで完了するため、端末の前で入力に手間取る状況をなくせます。
PMSを入れ替えずにセルフチェックインだけ導入できますか?
製品によっては可能ですが、利用中のPMSと連携できるかを必ず確認してください。連携できない場合、予約情報とチェックイン情報を二重管理することになり、かえって業務が増えます。対応PMSの一覧は各社に確認するのが確実です。
セルフチェックインシステムのまとめ、コスト詳細
セルフチェックインシステムは、人手不足の問題の軽減、顧客満足度の向上、運営コストの削減など、数多くのメリットをもたらしています。しかし、その一方で、高額な導入コストや操作の複雑性、システムトラブルへの対応など、いくつかの課題も存在します。
これらのシステムを最大限に活用するためには、適切な情報が不可欠です。
そこで、より詳しい情報を得るための一助として、aipassでは専門的な資料を提供しています。セルフチェックインシステムを5年利用した場合の想定コスト、ルームキー・スマートキーのコスト、さらには各システムの特徴や効果的な運用方法に関する詳細な情報をご覧いただけます。
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