近年、ホテル業界はデジタル化の波に乗り、顧客データの蓄積が促進されています。この中で、「CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)」への注目が高まっています。CRMは、顧客データの収集・分析を通じて、より個別化されたサービスを提供し、顧客満足度を向上させるための重要なツールとなっています。
この記事では、CRMの基本概念から、宿泊業界におけるCRMのメリット、選択時の重要なポイント、実際の導入事例に至るまでを分かりやすく解説します。
目次
宿泊業界におけるCRM(顧客関係管理システム)とは?
CRMは、顧客情報を収集・分析し、それを基にしたマーケティングやサービス提供を行うシステムです。具体的には、顧客の基本情報、過去の予約履歴、好みや要望などの情報を一元管理し、それらを活用して顧客に最適なサービスを提供することが可能になります。CRMの導入により、ホテルは個々の顧客に合わせたパーソナライズされた接客が可能となり、顧客満足度の向上を目指すことができます。
また、CRMは単に顧客情報を管理するだけでなく、そのデータを活用してリピーターの獲得や効率的なマーケティング戦略の立案などにも役立ちます。ホテル業界では、顧客一人ひとりのニーズに合わせたカスタマイズされた体験を提供することが重要とされており、CRMはその実現に不可欠なツールとなっています。
ホテル・旅館がCRMを導入するメリット
ホテルがCRMを導入することによる主なメリットを詳しく見ていきましょう。
接客の向上
CRMにより、ゲストの過去の滞在履歴、好み、特別な要求などの情報を蓄積し活用することで、よりパーソナライズされた接客が可能になります。例えば、以前の滞在で高評価を得たワインを記憶し、次の滞在時に推薦することや、アレルギー情報に基づいた特別な食事メニューの提供が可能です。
さらに、顧客の情報が一元化されているため、問い合わせや要望に迅速に対応することが可能です。
新規集客へのデータ活用
CRMに蓄積されたデータを分析することで、顧客の属性、嗜好、利用金額などを理解し、OTA(Online Travel Agency、オンライン旅行代理店)の販売プランを新たに作成したり、改善したりすることが可能です。
このようなデータ活用は、特にオンライン広告のターゲティングにおいても効果的であり、効率的な集客が見込めます。
リピーター顧客の獲得
CRMは顧客ロイヤルティの向上とリピーターの獲得に大きく寄与します。顧客データに基づき、セグメント別のメール配信や特別オファーを実施することで、顧客に合わせたマーケティングが可能となります。例えば、顧客の誕生日に特別なサービスを提供するなど、感動を与える小さな配慮がリピート率の向上につながります。
満足度の高い顧客からのポジティブな口コミは、新規顧客を獲得する強力な手段です。CRMを用いた個別対応は、このような自然な口コミの促進にも役立ちます。
ホテルがCRMを選ぶ際の重要なポイント
宿泊業界におけるCRM選定において重視すべき4つのポイントを紹介します。
マルチチャネル対応
ホテル運営では、ゲストとのコミュニケーション手段が多岐にわたります。そのため、メールだけでなく、ソーシャルメディア、ウェブサイト、電話、さらには直接の対面接触まで、様々なチャネルを通じて顧客と効果的にコミュニケーションを取る機能がCRMには必要です。
システムの統合性と拡張性
ホテルの予約システムやPOS(販売時点情報管理)システムとの統合性が求められます。ゲストの予約履歴や好み、宿泊傾向などホテル特有のデータを効率的に管理できる機能も必要です。また、将来のビジネス拡大やサービス多様化に対応できる柔軟な拡張性も考慮に入れるべきです。
ユーザーフレンドリーな操作性
CRMは現場のスタッフが直接操作することは少ないですが、様々な機能があるため操作性は重要です。直感的で理解しやすいインターフェースは、セグメント配信やデータ分析等の時間短縮と効率化を実現できます。
コストパフォーマンス
予算に合わせたコストパフォーマンスの高いCRMシステムを選ぶことも重要です。初期投資だけでなく、運用コストも含めた総合的なコストを検討し、長期的なROI(投資対効果)を考える必要があります。
CRMのデメリット、導入をおすすめしないホテルとは?
CRMの導入には多くのメリットがありますが、全てのホテルに適しているわけではなく、特定の状況では導入を見送るべき場合も存在します。
CRMシステムの主なデメリットは、高いコストです。特に、複数の店舗(チェーン展開)を持たないホテルや、レストランやレジャー施設などホテル以外の事業と顧客情報を統合する必要がない場合には、CRMよりもPMS(宿泊管理システム)の顧客管理機能の方がコストパフォーマンスに優れていると言えます。
また、インバウンドや新規顧客が中心のホテルの場合、CRMの強みであるリピーター獲得や顧客ロイヤルティの向上といったメリットが発揮されにくいです。顧客層が頻繁に変わるため、長期的な顧客関係の構築が難しく、CRM導入による効果が限定的になることが考えられます。
ホテル・旅館で活用できるCRMの紹介
Salesforce
顧客とのやり取りを自動化し、費用対効果の高いマーケティング活動を可能にします。AI搭載の分析機能により、マーケティング施策の最適化が行え、顧客体験の向上に貢献します。
また、Salesforce Data Cloudを活用し、顧客との各瞬間をパーソナライズすることで、各種チャネルでのエンゲージメントを強化します。顧客一人ひとりの情報を全チームが共有し、高い期待に応えるための拡張性に優れたCRMです。
https://www.salesforce.com/jp/products/
tripla Connect
tripla Connectは、宿泊業界に特化したCRMおよびマーケティングオートメーション(MA)ツールです。見込客から宿泊客までの顧客情報を一元管理し、ビジネス、ファミリー、レジャーなど様々なセグメントに対応した販売促進が可能です。
また、予約エンジンやAIチャットボットとの連携、PMSデータの取り込みにより、効率的な顧客管理とマーケティング活動を実現します。セグメント毎にカスタマイズされたマーケティングアクションを設定することで、宿泊施設は顧客のニーズに合わせたサービスを提供できるようになります。
Zoho CRM
Zoho CRMは、顧客管理を中心とした多機能クラウド型CRMツールです。世界25万社以上が利用し、顧客管理、見積・請求管理、レポート作成、AIによる将来予測など、幅広い機能を提供します。
25年以上の経験と開発を通じ、先進性と使いやすさを兼ね備え、数々の賞を受賞しています。Zoho CRMの拡張性により、マーケティング、カスタマーサポート、プロジェクト管理などとシームレスに連携し、ビジネス全体をサポートします。
ホテルのCRM活用事例
西武・プリンスホテルズワールドワイドにおけるSalesforceの導入事例は、CRMシステムがホテル業界でどのように活用されているかの優れた例です。特に、Salesforce Marketing Cloudの導入により、顧客一人ひとりに合わせた情報提供が可能になり、顧客体験の向上を実現しています。
レストラン利用の特典では、「半年間に一定回数利用してもらったお客さまに、お食事券をプレゼントする」というものがあります。そこで、“もう少し利用いただければ、特典を得られる”お客さまに対して、お知らせを送る試みもスタートさせました。そのほか、入会時のシナリオや記念日のメールなど、複数のシナリオを開発し、運用を続々と開始しています。
引用元:お客さま一人ひとりに最高の体験を提供するホテル&リゾートへ | Salesforce
まとめ
この記事では、ホテル業界におけるCRM(顧客関係管理)システムの重要性とそのメリットを詳しく解説しました。CRMを活用することで、よりパーソナライズされた接客、データを用いた効率的なマーケティング戦略やリピーター顧客の獲得も期待できます。
aipassのPMS(宿泊管理システム)では、ホテル業界に特化した顧客管理機能を提供しています。顧客管理や連携しているCRMに関するご質問があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。