ホテルのサイトコントローラーとPMSの違い | サイトコントローラー徹底比較

インターネット予約が当たり前となった現在、ホテル・旅館業界では「サイトコントローラー」の導入が急速に広がっています。楽天トラベルやBooking.comなど複数の予約サイトを利用する宿泊施設が増える中、これらを一元管理するサイトコントローラーは、もはや現代のホテル運営には欠かせないツールとなりつつあります。在庫や料金を一括管理することで、煩雑な手作業から解放され、ダブルブッキングのリスクも大幅に軽減できます。

本記事では、サイトコントローラーの基本的な機能から、PMSとの違い、導入メリット、選び方のポイントまで、わかりやすく解説します。ネット予約の効率化を図りたいホテルオーナーや運営担当者の方々に、ぜひ参考にしていただける内容となっています。

サイトコントローラーとは?

サイトコントローラーは、自社予約システムと複数のホテル予約サイト(OTA)を一括管理するシステムです。海外では「チャネルマネージャー」とも呼ばれています。在庫数、料金、予約情報を一元管理し、業務効率化と収益向上を実現します。国内外の主要OTAと連携し、予約情報を自動同期させることで、リアルタイムでの在庫管理が可能になります。これにより、ダブルブッキングを防止し、予約が入った際には各OTAの在庫数が自動更新されるため、手動調整が不要になります。

サイトコントローラー導入による業務比較

サイトコントローラーの導入有無による業務の違いを、具体的な例で見てみましょう。

AホテルとBホテルは、どちらもtripla、楽天トラベル、Booking.comの3つのサイトで客室を販売しています。

サイトコントローラーを導入しているAホテルの場合、朝9時に楽天トラベルで2部屋の予約が入ると、自動的にtriplaとBooking.comの在庫も2部屋減少します。夜間に急な予約が入っても、システムが自動で在庫を調整するため、フロントスタッフは翌朝、サイトコントローラーの画面で一括して予約状況を確認するだけで済みます。料金変更も一度の操作で全OTAに反映されるため、繁忙期の価格調整も迅速に行えます。

一方、サイトコントローラーを導入していないBホテルの場合、楽天トラベルで予約が入ると、スタッフは手動でtriplaとBooking.comにログインし、それぞれの管理画面で在庫を減らす作業が必要です。特に夜間は対応できないため、翌朝確認すると同じ部屋に複数の予約が入っていることもあります。料金変更も各OTAで個別に設定する必要があり、作業漏れや設定ミスが発生することもあります。また、スタッフが休暇中や病欠の場合、代わりの担当者が各OTAの操作方法を覚える必要があり、業務の引継ぎも複雑になります。

サイトコントローラーとPMS(宿泊管理システム)の違い

ホテルの運営において、サイトコントローラーとPMSは共に重要なシステムですが、それぞれ異なる役割を担っています。

サイトコントローラーの主な役割

  • 複数の予約サイト(OTA)との連携管理
  • 在庫・料金の一元管理と自動更新
  • 予約情報の集約と一括管理
  • 販売チャネル全体の最適化

PMS(Property Management System)の主な役割

  • フロント業務の効率化と管理
  • 部屋割り・チェックイン/アウト管理
  • 宿泊者情報の管理や顧客データの管理
  • 売上管理・請求書発行・会計処理
  • 清掃管理

簡潔に言えば、サイトコントローラーは「予約を獲得するための外部連携システム」であり、PMSは「獲得した予約を管理し、実際の宿泊をサポートするシステム」です。サイトコントローラーがOTAとの窓口となり予約を集める役割を担う一方、PMSは宿泊客が実際に施設を利用する際の業務全般をサポートします。

多くの施設では、この2つのシステムを連携させることで、予約の獲得から宿泊、チェックアウトまでの一連の流れをシームレスに管理しています。例えば、サイトコントローラーで受け付けた予約情報が自動的にPMSに取り込まれ、フロントスタッフは予約情報を再入力することなく、スムーズにチェックイン手続きを行うことができます。

これらのシステムの関係性が分かるように、以下に予約システム、サイトコントローラー、PMSの基本的なシステム構成図を示します。

両システムを適切に組み合わせることで、予約管理の効率化だけでなく、顧客満足度の向上やスタッフの業務負担軽減にもつながります。 PMSについてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

サイトコントローラー導入のメリット

1. 販路拡大による収益向上

サイトコントローラーを導入することで、複数の予約サイトを効率的に管理できます。国内外のOTAとの連携が容易になり、販売機会の最大化が可能です。特に、インバウンド需要の増加に伴い、海外の予約サイトとの連携も必要となっています。

例えば、手間いらずの場合、国内予約サイト(楽天トラベル、じゃらん、るるぶトラベル、一休.com、JALパック)、海外予約サイト(Agoda、Booking.com、Expedia、Trip.com)、自社予約サイト(tripla Book、OPTIMA、予約番、CHILLNN)など様々なシステムと連携しているため、有名どころからニッチなサイトまで幅広く販売することが可能です。

複数の予約サイトに掲載することで、より多くの潜在顧客に宿泊プランをアピールすることができ、予約数の増加につながります。

2. ダブルブッキングの防止

自動在庫調整機能により、リアルタイムでの在庫管理が可能です。これにより、オーバーブッキングのリスクを低減できます。例えば、残室が1部屋の場合、サイトAで予約が入ると自動的にサイトBの在庫が調整されます。

残室が1室しかない部屋をAとBのサイトで販売しており、同時にそれぞれの予約サイトで予約が成立してしまうダブルブッキングや、10室のホテルなのに11室の予約を受けてしまうオーバーブッキング。どちらも、フロントとして避けて通りたいトラブルです。これらのトラブルを回避しやすくするためにも、サイトコントローラーの導入は最適です。

また、予約の自動受付・キャンセル処理により、手動での入力作業が削減され、業務効率化と人件費の削減にもつながります。

3. プランや料金の一括管理

シーズナリティに応じた料金設定や、複数サイトへの一括反映が可能です。繁忙期や閑散期に合わせた柔軟な料金設定により、収益の最大化を図れます。

サイトコントローラーがないと、客室在庫やプラン期間、料金などをサイト毎に管理する必要があり、担当者だけでの管理には限界があります。一方、サイトコントローラーを導入すれば、複数の予約サイトを一括して管理でき、安心して販路を拡大できます。

例えば、「夏休み特別プラン」を作成した場合、各サイトの管理画面にログインして個別に登録する必要がなく、サイトコントローラー上で一度設定するだけで完了します。プラン情報の編集や一括販売開始・停止などにも対応しており、急な料金変更や販売停止が必要な場合でも、数クリックで全サイトに反映できます。操作方法の異なる各宿泊予約サイトの管理画面にて作業を行う必要がなくなり、プランメンテナンス作業時間を大幅に削減することができます。

また、予約サイトごとの販売実績や部屋タイプごとの稼働率など、詳細なデータ分析が可能です。これらのデータを活用し、効果的な販売戦略の立案や収益最大化が期待できます。

サイトコントローラーを選ぶポイント

1. 販売先の連携数

サイトコントローラーを選ぶ際には、連携可能な販売先の数と種類が重要な判断材料となります。特に、多数の販売先との取引を前提にしている場合や、今後販売先の拡大を視野に入れている場合は、自社の販売先が対応しているか確認が必要です。

例えば、TL-リンカーンは、楽天トラベル、じゃらんnet、Booking.comなど30以上のOTAに加えて、店舗型旅行会社への対応に力を入れており、JTBやエイチ・アイ・エスなど20社以上との連携が可能です。一方、手間いらずは国内外60以上のOTAとの連携に対応し、世界規模での集客が可能となっています。

2. 施設の規模に合った機能

サイトコントローラーには、民泊や小規模施設向けから数百室の大規模ホテル向けまで様々なシステムがあり、規模に合わせた選定が必要です。小規模施設では、シンプルな操作性と複数施設の一括管理機能が重要です。大規模施設では、詳細な権限設定、高いカスタマイズ性、大量データ処理能力が求められます。

料金面も、1室単位から使用できるシステムと、100室以上向けの料金体系を持つシステムがあります。オーバースペックなシステムは費用が高騰するため、施設規模と必要機能を十分検討しましょう。

例えば、ねっぱん!サイトコントローラー++は小規模施設向けに複数施設の一元管理機能と必要十分な機能を提供。一方、TL-リンカーンは大規模チェーンホテル向けに詳細な権限設定、豊富なカスタマイズオプション、複雑な料金体系への対応、効率的な大量データ処理能力を備えています。

3. PMSとの連携方法

PMSとの連携方法には主に1WAY連携と2WAY連携があります。1WAY連携は、サイトコントローラーからPMSへ予約情報のみを一方向に連携する方式です。予約情報の取り込みは自動化されますが、PMSで行った予約変更はサイトコントローラーに反映されません。

一方、2WAY連携は予約情報だけでなく、在庫情報も双方向で連携する方式です。PMS上での在庫変更が各販売チャネルに即座に反映されるため、情報更新のタイムラグがなく、ダブルブッキングのリスクを低減できます。特に、電話予約が多い施設では、2WAY連携が効率的です。

また、オプションの取込可否も確認しておくといいでしょう。宿泊予約だけでなく、食事や特典などのオプション情報も連携できるかどうかで、フロント業務の効率が大きく変わります。システムによってはオプション情報の連携に対応していない場合もあるため、事前に確認が必要です。

4. 料金

サイトコントローラーを選ぶ際には、初期費用や月額料金などのコスト面も比較する必要があります。以下に国内主要サイトコントローラーの料金比較表を示します。

製品名月額料金初期費用補足
ねっぱん!6,600円~55,000円~PMS連携費用が1way/2wayと室数で変動
手間いらず9,900円~50,000円~基本料金と別で予約数に応じた月額通信料が発生
TLリンカーン30,000円~100,000円~ネット販売管理機能限定版は月額15,000円~
らく通with9,800円~100,000円~従量課金なし
tripla link700円/部屋~無料PMS連携費用が300円/部屋

5. 使いやすさや自動化機能

サイトコントローラーの使いやすさや自動化機能の充実度も確認しましょう。例えば、手間いらずの「販売チャネル自動調整機能」は、一定の条件に従って特定の販売先を自動的に手仕舞いする機能があります。この機能を使えば、稼働率が高い日やチェックインの近い日は、手数料が割高な予約サイトでの販売を停止したり、販売チャネルを自社サイトだけに絞り込んだりといった対応が自動化されるため、収益の最大化を図れます。

また、ねっぱん!サイトコントローラー++は、同一のプランを各販売先にまとめて登録できるプラン一括登録機能を搭載しています。更に、「プラン自動延長」を使えば、複数の販売先に掲載されているプランの販売期間をまとめて延長できます。

主要サイトコントローラーの比較

ねっぱん!サイトコントローラー++

楽天グループの株式会社クリップスが運営するサイトコントローラーで、国内外のほぼ全ての主要OTAと連携しています。予約情報は即座にシステムに反映され、特に楽天トラベルグループならではの充実したサポート機能が特徴です。ノーショー対策(事前決済、キャンセル料自動徴収)や、複数のOTAへのプラン一括登録・自動延長機能などを備えています。また、予約成立後のサンクスメール自動配信機能によるリピーター育成やアップセルも期待できます。レスポンシブデザインに対応しており、PCがない場所でも操作が可能です。サポート体制も強化されており、操作代行サービスや勉強会も開催されています。

https://www.neppan.com/

手間いらず

手間いらず株式会社が運営するサイトコントローラーで、国内チャネルマネージャーとして最多の連携数を誇り、世界規模での集客が可能です。国内外60以上のOTAとの連携に対応し、空室在庫、販売料金、予約者情報などを一括管理することで、ダブルブッキングのリスクを低減し、作業時間を大幅に削減します。在庫数の増減に応じた販売先の自動調整機能や、競合施設の販売動向を把握できるレートサーベイ機能など、収益最大化とマーケティング施策に役立つ機能も搭載しています。特にOTAでの販売展開に力を入れており、スピーディーな操作性や、急激な稼働上昇を知らせるアラート機能、深夜の料金コントロール機能など、OTAを駆使した販売促進を希望する宿泊施設にとって魅力的な機能が揃っています。

https://www.temairazu.com/

TL-リンカーン

株式会社シーナッツが運営するサイトコントローラーで、OTAだけでなく、JTBなどの店舗型旅行会社(リアルAGT)との情報も一画面で一元管理できるのが大きな特徴です。多くのPMSとの2WAY連携に対応しており、PMS上での操作が各販売チャネルに即座に反映されます。また、「共通在庫サービス」により、予約確定と同時に在庫が引き落とされるため、ダブルブッキングのリスクを低減できます。OTA販売の人数売り止めやアラーム機能によるプラン管理、直接予約機能、団体情報管理機能なども備えています。豊富な統計データを活用した販売促進戦略の立案や、手厚いサポート体制も魅力です。

https://www.seanuts.co.jp/product/lincoln/

らく通with

鉄道情報システム株式会社(JRシステム)が、JRの予約・販売システムの開発で培ったノウハウを活かして提供するサイトコントローラーです。大手チェーンホテルから旅館・町家まで幅広い規模の宿泊施設で利用されており、旅行会社や国内外の予約サイト、PMSとの連携に対応しています。プラン・在庫・料金情報をエージェント全体に効率的に共有し、販売機会の最大化を支援します。販売先ごとに集計された在庫情報が3週間単位で表示されるため、広範囲の残室調整が可能です。リアルAGTの予約やアロット管理にも対応し、高水準のセキュリティ対策も特徴です。365日対応のサポート窓口も提供しており、安心して利用できます。

https://www.raku-2.jp/

tripla Link

トリプラ社が2024年5月に提供を開始した、アジアの訪日客獲得に不可欠な新たなBtoBサービスです。自社サイトやOTAなど複数のチャネルで販売する客室在庫を一括して管理できるサイトコントローラーであり、特に訪日需要の強い東アジアや東南アジアのローカルOTAとの連携に強みを持っています。台湾のLion TravelやezTravel、インドネシアのTravelokaなど28社と連携し、トリプラ社が海外ローカルOTAとの間に代理店として介在することで、宿泊施設は容易にアジア市場への販路を拡大できます。トリプラ社の既存サービスとのシームレスな連携や多言語化機能、バーチャルクレジットカード(VCN)での精算機能(近日実装予定)も特徴です。海外での運用実績も有しており、信頼性が高いと言えます。

https://tripla.io/link/

サイトコントローラーのまとめ

この記事では、サイトコントローラーの概要、PMSとの違い、導入するメリット、選定ポイント、主要サービスの比較について解説しました。施設の規模やニーズに合わせて最適なサイトコントローラーを選ぶことで、複数の予約サイトを一元管理し、ダブルブッキングを防止しながら収益の最大化を実現することができます。特に、PMSとの連携方法や自動化機能の充実度は、日々の業務効率に大きく影響するポイントです。

aipassでは、ねっぱん!サイトコントローラー++、TL-リンカーン、手間いらず、らく通withといった国内主要4社のサイトコントローラーとの豊富な連携実績があります。さらに、在庫情報も双方向に連携できる2way連携にも対応しているため、電話予約やルームチェンジが多い施設でも安心してご利用いただけます。

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