ホテル・民泊のスマートロック(スマートキー)比較|キーレスのメリットや選び方

近年、ホテルや民泊業界では、スマートロック(スマートキー)の導入が急速に進んでいます。従来のシリンダーキーやカードキーに代わり、暗証番号やQRコードを使ったキーレスによる鍵管理で、施設運営の効率化やゲスト体験の向上が期待されています。スマートロックは、ゲストが物理的な鍵を持ち歩く必要がなく、チェックインやチェックアウトの手続きを簡略化できる点が大きな魅力です。

本記事では、ホテルや民泊に適したスマートロックの種類、導入のメリット・デメリット、選び方のポイント、そして実際の活用事例について詳しく解説します。スマートロックの導入を検討しているホテル・民泊のオーナーや運営者が参考にできる内容です。

スマートロック(スマートキー)とは?工事取り付け型と後付け型

スマートロックとは、従来の鍵とは異なり、スマホや専用の暗証番号、QRコードなどで解錠できる電子錠のことを指します。スマートキーとも呼ばれています。ゲストは物理的な鍵やスマートキーを持ち歩く必要がなく、パスワードやスマホアプリ、QRコードで簡単に開けることができます。スマートロックは、設置方法によって大きく2つのタイプに分類されます。

1つ目は「工事取り付け型」です。こちらはドアの内部にスマートロックシステムを埋め込み、既存のドアハンドルや鍵穴を取り替えるタイプです。セキュリティ面で高い性能を発揮する一方で、取り付けには専門業者による工事が必要で、初期費用も高めとなります。多くの高級ホテルやセキュリティ重視の施設で利用されています。

2つ目は「後付け型」です。こちらは既存のドアや鍵にスマートロックを取り付けるもので、工事不要で簡単に導入できるのが特徴です。コストを抑えながらスマートロックのメリットを享受できるため、小中規模の宿泊施設や民泊などで人気があります。ただし、後付け型の懸念点として、テープやネジで固定するため、設置条件によっては外れてしまう可能性がある点が挙げられます。ドアの素材や表面の状態が取り付けに適していない場合、スマートロックが安定しないことがあるため、事前の設置環境の確認が重要です。

ホテル・民泊がスマートロックを導入するメリット

スマートロックの導入は、ホテルや民泊の運営に多くの利点があります。ここでは、具体的な4つのメリットについて解説します。

チェックインの効率化。鍵の受け渡しや預かりの手間をなくせて、フロントの無人化も可能

スマートロックを導入することで、従来のシリンダーキーやカードキーの受け渡しを省略できます。ゲストが施設到着後すぐに部屋にアクセスできるため、フロントでの待ち時間を削減し、チェックインのプロセスを大幅に効率化します。

さらに、チェックイン・チェックアウトを完全に無人で行えるため、フロント業務の負担軽減や24時間対応が可能になります。

セキュリティの強化。不正侵入や不法滞在のリスクを低減

スマートロックは、滞在時間が終了した時点で利用できなくなるため、過去のゲストによる不正侵入や不法滞在のリスクを大幅に減らすことができます。従来の物理的な鍵では、鍵の複製や紛失がセキュリティ上の懸念となっていましたが、スマートロックは暗証番号やスマホアプリのアクセス権をリモートで管理できるため、より安全な運営が可能です。

解錠・施錠(入退室)の履歴や時間を遠隔で確認できる

スマートロックは解錠・施錠の履歴をリアルタイムで記録し、遠隔から確認することができます。この機能により、ゲストのチェックイン・チェックアウトの時間や、スタッフの入室状況を把握することができ、トラブルの発生時には迅速な対応が可能です。また、非常時には施設管理者が遠隔から解錠指示を出せるため、緊急時の対応力も向上します。

ゲストの利便性向上。鍵の持ち歩き不要で快適な滞在をサポート

ゲストにとって、スマートロックの最大のメリットは、物理的な鍵を持ち歩く必要がなくなる点です。特に、カードキーやシリンダーキーを紛失するリスクがないため、安心して滞在を楽しむことができます。また、精算が完了していれば、チェックアウトの際にフロントに立ち寄る必要がないため、観光やビジネスで忙しいゲストにとって便利です。

ホテル・民泊がスマートロックを導入するデメリット

ホテルや民泊にスマートロックやスマートキーを導入するメリットは多いですが、注意すべきデメリットもあります。

ゲストが解錠方法に戸惑う可能性がある

スマートロックは従来の鍵とは異なり、スマホや暗証番号での解錠が一般的です。しかし、ゲストによってはこうした解錠方法に不慣れで、操作に戸惑う場合があります。特に高齢のゲストや、スマホを持っていない人にとっては、解錠がスムーズにいかないことがあります。これに対しては、事前に解錠方法をわかりやすく案内することや、ゲストが直感的に利用できるスマートロックを選定することが重要です。

スマートロック管理システムからの鍵発行の手間

スマートロックの鍵情報を発行・管理するには、専用の管理システムを使ってアクセス権を設定する必要があります。これにより、施設のスタッフは予約の都度、解錠コードやリンクを発行する手間が発生します。また、システムの操作ミスやゲストへの情報伝達の遅れが、トラブルの原因になることもあります。

これを防ぐためには、次章に記載しているPMSやセルフチェックインシステムとの連携で解決することができます。

定期的な電池交換の必要性

スマートロックは電池で稼働する物が多く、定期的な電池交換が必要です。電池切れを防ぐためには、交換スケジュールの管理が欠かせませんが、これを怠るとゲストが解錠できなくなるなどの問題が発生します。電池の寿命が短くなったら通知されるシステムを選定しましょう。

ホテル・民泊がスマートロックを選ぶ際の重要なポイント

ホテルや民泊で利用されているスマートロックは、10社前後あります。その中から自分の施設にあったスマートロックを選ぶ際の、いくつかの重要なポイントを解説します。

1. 解錠方法の違い。テンキー(暗証番号)、QRコード解錠、スマホアプリやブラウザのボタン解錠

スマートロックにはいくつかの解錠方法があります。まず、テンキー方式は暗証番号を入力することで解錠できるため、スマホを持っていないゲストなど、誰でも利用できる点が魅力です。暗証番号はメールで送信したり、スマホのカメラで撮影して保存したり、プリンターで印刷して渡すことができるため、番号の管理や同行者との共有が簡単です。

次に、QRコード方式は、スマホをかざすだけで解錠できるため、シンプルな操作で高いユーザー体験を提供します。その反面、ドアごとに専用のQRコードリーダーが必要となるため、設置にコストがかかる場合があります。

最後に、スマホアプリやWebブラウザを利用したボタン操作方式は、直感的な使い勝手の良さが特徴です。ゲストは専用のアプリを操作するだけで解錠できるため、スマートな宿泊体験を提供できます。例えば、マリオット・インターナショナルのような大手ホテルチェーンでも採用されており、利便性の高さが評価されています。しかし、自施設専用のアプリを開発する場合、その開発・維持にはかなりのコストがかかるため、費用対効果の観点からも慎重な検討が必要です。

2. PMSやセルフチェックインシステムとの連携

PMS(ホテル管理システム)やセルフチェックインシステムとの連携が行えるかどうかも大切なポイントです。システム連携により、予約情報に基づいて自動的に鍵の発行や削除が行えるため、スタッフの手間を大幅に削減できます。また、ゲストへの案内もシステム上で自動化できるため、トラブルを防止し、よりスムーズな運営が可能となります。

3. 本体費用、設置費用、ランニング費用

スマートロック導入の際には、初期費用とランニング費用をしっかりと把握することが重要です。工事取り付け型では専門業者による設置費用が発生しますが、後付け型の場合はDIY感覚で取り付けられることが多く、工事費用が発生しない場合が多いです。

ランニング費用については、スマートロックのシステム使用料やメンテナンス費用が含まれ、1台あたり月額1,000円から2,500円程度が一般的です。特に部屋数が多い施設では、このランニング費用が累積されるため、導入前に全体のコストをシミュレーションしておくことが不可欠です。

4. 共用部や付帯施設の有無

宿泊施設によっては、部屋だけでなく、エントランスやエレベーターなどの共有部、サウナやフィットネスルームなどの付帯施設にもスマートロックを導入したい場合があります。そのため、スマートロックがこれらのドアにも設置ができ、また客室のドアと連動できるを確認することが重要です。多機能なスマートロックであれば、施設全体のセキュリティを一元管理でき、運営効率の向上につながります。

5. トラブル発生時に遠隔制御やシリンダーキーで解錠できるか

トラブルが発生した際の対応策も考慮しておきましょう。例えば、スマートロックの故障やスマホのバッテリー切れなどにより、ゲストが解錠できない状況が発生することもあります。このような場合、遠隔制御で解錠できる機能や、従来のシリンダーキーによるバックアップ解錠が可能な物を選ぶことが重要です。

ホテル・民泊におすすめのスマートロックの紹介

【工事取り付け型】

RemoteLOCK

RemoteLOCKは、Wi-Fiを通じてクラウドシステムで一元管理できるスマートロックで、1日10万組以上の入室を管理する実績を誇ります。ゲストには予約情報に基づいたユニークな暗証番号が割り当てられ、番号を押すだけで簡単に解錠できます。電池切れや通信障害時にはメール通知機能が作動し、トラブルを最小限に抑えます。また、多数の宿泊管理システムと連携しているため、PMSやセルフチェックインシステムとの連携が可能です。

https://remotelock.kke.co.jp/case/hotel/

L!NKEY

L!NKEYは、現地操作と遠隔管理の両方に対応したスマートロックで、暗証番号、ICカード、NFC、自動ロックなど多彩な解錠機能を備えています。「スタンダードプラン」では現地での電子錠操作のみ、「リモートプラン」では遠隔操作と複数拠点の一元管理が可能で、予算や用途に応じて選べます。穴開け不要の独自の取り付け方法で、原状復帰や別物件での再利用もスムーズです。

https://smart-lock.jp/

Assa Abloy Mobile Access

モバイルアクセスは、非接触カード錠をBluetooth技術でスマホから操作できるものです。Bluetooth基板を追加することで、ゲストのスマホがそのまま部屋の鍵として使用可能になりますが、利用するには専用のスマホアプリが必要です。ホテルはMobile AccessアプリのSDKをバックエンドに組み込むことで、モバイルキーの運用が開始でき、エレベーターやエントランス、フィットネスクラブなどの共用部でも同様の操作が可能です。

https://www.assaabloy.com/jp/ja

【後付け型】

SwitchBot

SwitchBotロックは、Iotデバイススマートロック売上No.1の製品です。設置が非常に簡単で、約99%のドアロックに対応しています。本体費用や月額費用(システム連携費)は業界最安値で、コストパフォーマンスにも優れています。

指紋認証や共通カードによる解錠が可能なため、管理者による開け閉めも簡単に行えます。aipassのPMSやセルフチェックインシステムとも連携でき、ホテル・民泊運営の業務効率化を実現できます。

https://www.switchbot.jp/pages/switchbot-lock-pro

Qrio Lock

Qrio Lockは、日本国内の約80%以上のドアに対応し、調整部品を複数タイプ用意することで多様なドア環境に適応します。設置は簡単で、既存のカギに両面テープで貼り付けるだけで、工事不要で後付け設置が可能です。

最大50個のPINコードを同時発行できるほか、スマホやICカードでの解錠・施錠にも対応しており、多様な利用シーンに適した柔軟な運用が可能です。

https://qrio.me/smartlock/

Akerun

Akerunは初期費用が不要なリース式スマートロックで、月々の維持費だけで利用可能です。スマホやICカードで簡単に施錠・解錠ができます。万が一の故障時にもサポートがあり安心です。専用の入退室管理システムで、時間帯や曜日に応じた鍵発行が可能できます。

https://akerun.com/

ホテル・民泊のスマートロック活用事例

スマートロックの導入により、ホテルや民泊の運営がどのように変わるのか、実際の事例をもとにその効果や運用方法を紹介します。

「アパートメントホテル ecott」の事例

セルフチェックインとセルフ決済をスマートロックと組み合わせることで、20時以降のフロントの無人化に成功しています。

最初は無人では難しいのではないかという不安な面もあったんですが、実際にやってみたら無人の時間帯も問題なくセルフチェックインしていただけました。特に都心からいらっしゃるお客様や外国の方はスムーズに利用していただいています。20時以降到着のプランも販売しているため、予約時にセルフチェックインであることを知っていただいている方も多いです。また、20時以降に到着するお客様にはaipassでのクレジットカード決済をお願いしています。

導入事例 | アパートメントホテル ecott

「HOTEL SOBOKU」の事例

スマートロックと事前チェックイン・セルフチェックアウトシステムを導入することで、ゲストの現地手続きを簡略化しています。ゲストは到着後すぐにくつろぐことができて、滞在終了時にはすぐに出発することができます。

半数以上のお客様が事前にチェックインを済ませており、現地ではタブレットにQRコードをかざすだけでチェックインが完了します。リモートロックと連携することで、暗証番号を自動で発行できるため、お客様はそのままスムーズに入室いただけています。

チェックアウトもスマートフォンでQRコードを読み取って行えるため、お部屋を出られてからそのままご出発いただける点が好評です。

導入事例 | HOTEL SOBOKU

まとめ

スマートロックは、ホテルや民泊の運営を効率化することができます。チェックイン手続きの簡略化やセキュリティの強化、鍵の受け渡しの手間を省くことにより、運営者とゲストの双方に多くのメリットを提供します。しかし、導入にあたっては、解錠方法の選定や初期費用・ランニング費用、運用時のトラブル対応といった注意点も考慮する必要があります。

スマートロックの導入を検討する際には、施設の規模や運営スタイル、ターゲットとする顧客層に合った製品を選ぶことが重要です。適切なスマートロックを選定し、システム構成を整えることで、その効果を最大限に引き出すことができます。

良い体験をつくるホテル管理システムのaipassは、リモートロックやSwitchBotと連携し、PMSやセルフチェックインシステムとしてご利用いただけます。スマートロックの導入や運用に関するご質問やご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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